早わかり投資

(目次)
1.投資の重要性
2.投資理論の王道「ケインズの限界効率理論」
3.数量重視の「加速度原理」と「ストック調整原理」
4.株式市場に注目した「トービンのQ理論」
5. 現実の投資行動



■■ 1.投資の重要性 ■■

投資とは、消費と異なり、長く使用できるものに対する支出です。具体的には,個人の住宅投資や企業の設備投資です。この投資は,日本の総需要約500兆円の2割程度に過ぎませんが,変動が大きいので景気変動の原因であるといわれています。これは、消費が総需要の6割近くを占めているのですが,あまり変動せず安定していることと対照的です。

不況になったからといって、消費を2割も3割も減らす人は少ないですが,投資については,不況になれば設備投資を半減させる企業はたくさんあることを考えれば、投資の変動が大きいこともおわかりいただけると思います。

そして、投資は財の需要ですから,投資が増加すれば、財の需要(機械や住宅の注文)が増加し,生産が増加するので国内総生産(GDP)が増加し,景気は良くなっていきます。逆に,投資が減少すれば、財の需要(機械や住宅の注文)が減少し,生産が減少するので国内総生産(GDP)が減少し,景気は悪化します。


★ポイント★
1.投資は需要の2割程度であるが、変動が激しいので景気変動に及ぼす影響は大きい。



■■ 2.投資理論の王道「ケインズの限界効率理論」 ■■

投資の判断でのポイントは利益率の計算です。投資は将来、長い期間にわたって収入を上げますので、利益の計算が複雑になります。そこで、ケインズは、投資の利益率を利子率で表示する投資の限界効率というものを考えました。つまり、投資の限界効率とは定期預金でいうと何%の金利分の利益かということです。ですから、限界効率10%の投資案件とは、金利10%の定期預金と同じ利益率だということです。

そして、ケインズは、この投資の限界効率と利子率の比較により投資の判断がなされると考えました。利子率とは、銀行から資金を借り入れた場合の金利です。通常、企業が投資する場合には、銀行から借り入れをしますので、銀行に払う利子が費用となります。

ですから、限界効率が10%と、利子率5%より大きい場合には、銀行から5%で資金を借りて10%の定期預金に預けるのと同じですから、最終的に儲かるので投資を行います。

限界効率が5%と、利子率5%と同じ場合には、銀行から5%で資金を借りて5%の定期預金に預けるのと同じことですから、最終的な利益はゼロですので、投資をしてもしなくても同じです。

また、限界効率が2%と、利子率5%より小さい場合には、銀行から5%で資金を借りて2%の定期預金に預けるのと同じですから、最終的な利益は−3%で投資をすると損をしますので、投資はしません。

以上のように、ケインズは、限界効率と利子率を比較し、利益を考えて投資するかしないかを決めると考えました。この考えは、現在、米国のMBAの投資理論でも中心となっている考えです。ただし、MBAでは、投資の限界効率ではなく、内部収益率(Internal Revenue Rate : IRR)と呼ばれています。エクセルやロータス1-2-3などの通常の表計算の関数に入っているほどポピュラーなものです。

この投資理論に従えば、利子率が下落すれば、銀行に払う利子が少なくなるので、採算に乗る投資案件が増加し、投資が増加することになります。

★ポイント★
1.ケインズは投資の利益率である投資の限界効率が銀行へ支払う利子率よりも大きいと投資が行われると考えた。
2.ケインズの投資理論に従えば、利子率が下落すれば、銀行に払う利子が少なくなるので、採算に乗る投資案件が増加し、投資が増加する。

★ キーワード★
投資の限界効率理論
利益率である投資の限界効率が銀行へ支払う利子率よりも大きいと投資が行われると考えたケインズの投資理論。

投資の限界効率
投資の利益率を、定期預金でいうと何%の金利分の利益かで表示したもの。ですから、限界効率10%の投資案件とは、金利10%の定期預金と同じ利益率だということです。



■■ 3.数量重視の「加速度原理」と「ストック調整原理」 ■■

ケインズの限界効率理論は、限界効率という投資の利益率と利子率を比較して、その投資が儲かれば投資するというのもでした。これは利益を重視した理論です。

しかし、現実には、あまり利益を意識せず、生産が追いつかないから投資を行うというケースも多いようです。このように、利益より生産量という数量を意識した投資理論が「加速度原理」です。

経済全体での生産量はGDP(国内総生産)ですので、加速度原理では「投資はGDPの増加分に比例する」と考えます。GDPの増加分とは生産量の増加分です。生産量の増加のためには新たに機械が必要ですから投資を行います。ですから、生産量(GDP)の増加分が大きければ、たくさん機械が必要なので投資も多くなるというわけです。たとえば、今年需要が20%増え生産も20%増えそうだとしましょう。このとき、投資して機械を20%増やせば生産が追いつきます。このようにして、加速度原理では、機械の20%分だけ投資がなされることになります。

しかし、この予想は当たるとは限りませんし,一時期に大量の機械を購入すると機械の価格が上昇したりしますので,実際の投資はその一部しかなされないというのがストック調整原理です。

★ ポイント★
1. 加速度原理のよると、投資量は生産量(GDP)の増加分に比例する。
2. しかし、現実には、望ましいと予想される投資の一部しか実行されないという点を考慮したのがストック調整原理である。

★キーワード★
加速度原理
投資量は生産量(GDP)の増加分に比例するという投資理論。生産量の増加のためには新たに機械が必要ですから投資を行うことになるので、生産量(GDP)の増加分が大きければ、たくさん機械が必要なので投資も多くなるというわけです。たとえば、今年需要が20%増え生産も20%増えそうだとしましょう。このとき、投資して機械を20%増やせば生産が追いつきます。このようにして、加速度原理では、機械の20%分だけ投資がなされることになります。

ストック調整原理
望ましいと予想される投資の一部しか実行されないという投資理論。これは、1度に大量の投資を行うと、機械の価格が上昇してしまったり、機械の生産が追いつかないので、一部しか投資しなかったり、予想があたるとは限らないので全部投資すると大損する可能性があるので,一部しか投資しないからです。



■■ 4.株式市場に注目した「トービンのQ理論」 ■■

今までの投資理論とは異なり、トービンという経済学者は、投資を株式市場との関係で考えました。つまり、「株式の時価総額(株価X発行済株式数)」と「既存の機械等の買換費用」の関係により、投資すべきかどうかが決まると考えました。

将来儲かる企業の株価は上昇し、株式時価総額は大きくなりますし、将来儲からない企業の株価は下落し、株式時価総額は小さくなりますので、「株式の時価総額」とは企業の将来の利益を表します。

これに対し、「既存の機械等の買換費用」とは、その企業の機械の費用です。したがって、「株式の時価総額」(=将来の利益)が「既存の機械等の買換費用」より大きければ、その企業は、機械の費用より将来の利益が大きいので投資をすべきであるということになります。

たしかに、株価が高く、「株式の時価総額」(=将来の利益)が大きい企業は、有望な投資機会が多くあり積極的に投資するでしょうから、このような状況をトービンのQ理論で説明できます。

しかし、問題点もあります。この理論では、企業の株価が高ければ、その企業は投資をすべきだとわかっても、その企業の中でどの投資案件に投資すべきかということは説明できません。

★ ポイント★
1.トービンという経済学者は、投資を株式市場との関係で捉え、「株式の時価総額(株価X発行済株式数)」と「既存の機械等の買換費用」の関係により、投資すべきかどうかが決まると考えた。

★キーワード★
トービンのQ理論
「株式の時価総額(株価X発行済株式数)」と「既存の機械等の買換費用」の関係により、投資すべきかどうかが決まるというトービンの理論。「株式の時価総額」とは企業の将来の利益、「既存の機械等の買換費用」とは、その企業の機械の費用です。したがって、「株式の時価総額」(=将来の利益)が「既存の機械等の買換費用」より大きければ、その企業は、機械の費用より将来の利益が大きいので投資をすべきであるということになります。



■■ 5.現実の投資行動 ■■

ケインズの限界効率理論、加速度原理、トービンのQ理論などを説明しましたが、現実の投資行動はどうなのでしょうか。

まず、限界効率と利子率を比較し、最終的に利益の出る投資を行うというケインズの限界効率理論は、米国のMBAで教えている投資理論です。このように、常に利益を意識しながら投資する場合は多いと思われます。

しかし、加速度原理のように、利益は明確には考えずに、今年は生産量が増えるので機械が新たに必要だから投資するということもあります。特に,今までの日本ではこのパターンの投資が多かったと思います。なぜなら、従来の日本は、顧客に注文に合わせて生産量を増強していけば、利益は後からついてきたからです。

また、株価の高い企業はたくさんの投資を行います。トービンのQ理論では、株価が高いということは将来の利益が大きいのだから投資すべきとなりますので、現実に妥当しそうに見えます。しかし、現実には,ある企業は将来儲かるネタが多くたくさん投資すべき会社であるから株価は高いのでしょうから、議論が逆のように思えます。つまり、株価が高いので投資すべきなのではなく、投資すべき会社であるから株価は高いということです。

★ポイント★
1.投資理論は、利益を重視する限界効率理論、トービンのQ理論と、数量を重視する加速度原理に分けられる。
2.現実の投資行動は、利益を重視して投資する場合と生産量を確保するために投資する場合もあり、様々である。つまり、1つの投資理論では説明がつかない。