早わかり金融

金融の基本のキホンから最近話題のゼロ金利政策までをご説明します。

(目次)
1 金利の決まり方
2 貨幣とは?
3 金利と景気
4 日銀とは?
5 金融政策の有効性
6 ゼロ金利政策とは?
7 政策のタイムラグ−フリードマンの主張




■■1 金利の決まり方 ■■

金利とは何でしょうか?色々な言い方がありますが、貨幣のレンタル価格と考えるとよくわかります。ビデオを借りれば、一泊300円とレンタル料がかかります。同様に,貨幣という便利なものを借りるときにレンタル料として払うのが金利というわけです。

次に、金利はどう決まるのでしょうか?金利は貨幣市場の需要と供給により決まります。ここで、貨幣市場と言うのは貨幣を売り買いする市場ではないことに注意してください。貨幣を売っても代わりにもらうものも貨幣ですから、貨幣の売り買いは意味がありません。貨幣市場とは,貨幣の貸し借りをするレンタル市場です。ですから、貨幣市場で需要者とは,買いたい人ではなく借りたい意味し,供給者とは,売る人ではなく貸したい人を意味します。

需要量が供給量より多ければ,需要量=借りたい人のほうが多いので貨幣が不足し、レンタル価格である利子率が上昇します。逆に、供給量=貸したい人の方が需要量より多ければ,貸したい人が多いので貨幣は余り、レンタル価格は下落します。

このように金利が動くことにより、最終的に、金利は,需要量(貨幣を借りたい、保有したい)と供給量(貨幣を貸したい、世の中の貨幣の存在量)が等しくなる水準に決まります。

★ポイント★
(1)金利は貨幣そのものの価格ではなく,貨幣のレンタル価格である。
(2)金利というのは価格の一種だから需要と供給で決まる。


★ キーワード★
金利
貨幣のレンタル価格。貨幣市場において需要量(貨幣を借りたい、保有したい)と供給量(貨幣を貸したい、世の中の貨幣の存在量)が等しくなる水準に決まります。



■■ 2 貨幣とは? ■■

「貨幣」とは英語でいうとMoneyで、現金(Cash)とは違います。今回は、貨幣の機能と、具体的に貨幣とは何を指すのかについて解説します。

前回、金利とは貨幣のレンタル価格であるといいましたが、貨幣とは、以下の3機能をもつものです。

(1) 交換媒介機能
もし貨幣のない物々交換の世界だったら、取引相手が自分の欲しいものを持っていると同時に、自分が取引相手の欲しい物を持っていることが必要です。しかし、お互いが欲しいものを持っていることは稀ですから、なかなか取引は成立しません。

ところが、現実の経済では、貨幣があります。ですから、自分の持っているものを売って貨幣をもらい、その貨幣で、好きなときに好きな物を買えばよいのです。会社員であれば、労働サービスを提供し、会社から貨幣をもらい、その貨幣で好きなものを買えばよいのです。

このように貨幣を用いることにより、取引は行いやすくなり、経済は活発になります。私たちの住む現実経済は、貨幣を交換の仲介とすることにより非常に便利な世界になっています。このように貨幣を使う経済を貨幣経済といいます。

(2)価値尺度機能
日本国内であれば、物の価格は、日本の貨幣の単位である「円」で表示されます。ですから、私たちは、物の価格をすぐに比較できるのです。もし、貨幣がない物々交換経済だったら、カローラ1台は豚5匹、サニ−1台はニワトリ50羽などと書いてあり、いったいどっちが高いのか比べるのも大変です。貨幣経済では、貨幣の単位である円で表示されるので、すぐに比較でき、取引も行いやすくなり、経済が活発化します。これを、貨幣の価値尺度機能といいます。

(3)価値保蔵機能
貨幣は、価値として貯めておくことが出来るという機能です。これは、お金が余ったとき、貨幣として価値を貯めておくことが出来るということです。

では、以上の3機能を持つ貨幣とは,具体的に何を指すのでしょうか? 3機能を持っているものは、まず現金です。現金は、そのままで、いろいろな物と交換できます。現金が貨幣であることには疑いがありません。ただし、経済では、3機能をもつ貨幣は現金だけではなく預金も貨幣とします。なぜなら、普通預金は、キャッシュカードですぐに現金がおろせますから、便利です。また、クレジットカードの買い物は,支払いは普通預金の引き落としですから,結局,普通預金で買い物を行っているのと同じだからです。

実は、預金をどこまでを貨幣と認めるかによって、貨幣はM1、M2、M2+CD、M3、M3+CDの5つに分かれていくのですが、その話は、専門的なのでここではやめておきます。

★ポイント★

1.貨幣とは,(1)交換媒介機能、(2)価値尺度機能、(3)価値保蔵機能の
3つの機能を持つものであり、
2.具体的には、貨幣=現金+預金である。

★ キーワード
貨幣
交換媒介機能、価値尺度機能、価値保蔵機能の3機能をもつもの。具体的には、貨幣=現金+預金。

貨幣経済
貨幣を交換の仲介とする経済。貨幣を用いることにより、取引は行いやすくなり、経済は活発になります。貨幣を用いない経済は物々交換経済となります。

交換仲介機能
自分の持っているものを売って貨幣をもらい、その貨幣で、好きなときに好きな物を買うこと。たとえば、会社員であれば、労働サービスを提供し、会社から貨幣をもらい、その
貨幣で好きなものを買います。これは、労働を提供して好きなものを買うのですが,貨幣を仲介しています。これを、貨幣の仲介機能といいます。

価値尺度機能
日本国内であれば、物の価格は、日本の貨幣の単位である「円」で表示されます。ですから、私たちは、物の価格をすぐに比較できるのです。もし、貨幣がない物々交換経済だったら、カローラ1台は豚5匹、サニ−1台はニワトリ50羽などと書いてあり、いったいどっちが高いのか比べるのも大変です。このように、ものの価値は、貨幣の単位である円で表示されることを、貨幣の価値尺度機能といいます。

価値保蔵機能
貨幣は、価値として貯めておくことが出来るという機能です。これは、お金が余ったとき、貨幣として価値を貯めておくことが出来るということです。



■■ 3 金利と景気 ■■

すでにお話ししたように、金利は貨幣のレンタル価格で、貨幣の需要と供給により決まります。貨幣の需要や供給が変われば,金利も動きますが,この金利が動くことによって私たちの生活にどのような影響を及ぼすかを考えます。

ここでは、「消費者として考えると、金利が上がる場合、景気が悪くなるといった間接的な影響ではなく、直接的には、借金や預金金利が上昇することぐらいなのでしょうか?」という読者の質問にもお答えしたいと思います。

1. 金利が下がると、預金をしている人は利子が減るから不利です。特に,過去に貯めた財産の利子で暮らしている人の生活は苦しくなります。このような人は高齢者に多いと思われます。

2. 金利が下がると,定期預金などの魅力がなくなりますので,危険を犯しても株式などを買って儲けようという動きが出てきますので,株価は上がる、という可能性が大きくなります。株価が上昇すると、株で儲かる人が増えるので,その人たちの消費は増えます。

3. 金利が下がると、住宅ローンの金利が下がるのでマイホームを購入する人が増え、住宅投資が増加します。同様に,企業も資金が借りやすくなり,資金を借りて設備投資を増やします。このようにして、経済全体の投資も増加します。

4.以上のように,消費,投資が増加し,注文が増えるので,それに合わせて生産も増えます。経済全体では,国民総生産とか国内総生産と呼ばれるものが増加します。

5.また、日本の金利が下がると,日本よりも外国の金利のほうが魅力的になりますので,外国の通貨で預金(外貨預金)する人が増える可能性があります。外貨預金は,円の預金を解約し,円を売って外貨を買って預金をしますので,円売りとなり、円安になります。円安は輸出=外国からの日本製品への注文を増やしますので,生産量はさらに増えます。

6. このように、金利を下げると、多くの場合,生産量が増加し,国内総生産も増加します。生産量が増加すれば,企業は労働者をたくさん雇うようになり失業は減少し,企業収益も改善し,社員の給料も上昇していくことでしょう。

経済理論では,以上の2.〜6.のようにして、金利引下げが,景気をよくし、私たちの生活を改善していきます。

しかし、以上の議論は、金利以外の経済環境(他の条件)が変わらないという前提です。金利を下げても,同時に金融危機などが起こってしまえば,金融危機などの影響で景気が悪くなることもあります。現実の経済は,金利以外にも,色々な経済環境が変わっていま
すので,2.〜6.のように単純な結果になるとは限りません。

ここが経済学の限界かもしれません。現実経済は複雑ですから,経済学の単純な理論ではすべてを説明できないのです。それを理由に経済学は無意味と言う人がいます。しかし、経済学がわかれば6〜7割のことはわかりますが、経済学がわからないとまったく理解で
きないでしょうから,経済学は十分に意味があると考えるべきではないでしょうか。

★ポイント★
1. 金利を低くすると、消費や投資が増え、その結果,生産が増える。
2. 生産が増えれば,失業が減り,国民の所得も増え、私たちの生活は改善していく。



■■ 4 日銀とは? ■■

日銀は中央銀行と呼ばれる特別な銀行であることはご存知の方も多いと思います。日本の紙幣には日本銀行券と印刷してあり、現金である紙幣を発行できるのは日銀だけです。これに対し私達が利用している銀行(たとえば、東京三菱銀行とか住友銀行など)は、紙幣の発行ができません。このような中央銀行以外の銀行は市中銀行と呼ばれます。

ちなみに、米国の中央銀行、つまり、ドル紙幣を発行するのは米国連邦準備銀行(FRB:Federal Reserved Bank)でFederalの一部をとってFed(フェッド)とも呼ばれ、ユーロを発行する欧州共同体(EU)の中央銀行は欧州中央銀行(ECB:European Central
Bank)です。

日銀などの各国の中央銀行は、政府から独立しているのが通常です。ここで、政府とは行政府の略で,国の三権分立でいうと国会・内閣・裁判所の内閣にあたります。内閣とは、内閣総理大臣を長とし、国務大臣とその下にある各省庁を意味します。ですから、金融監
督庁や大蔵省は政府の一部です。ところが、日銀は公的機関なのですが、政府ではなく、日本銀行法に基づいて設立された特殊法人なのです。1998年4月より、日銀法が改正され、日銀の政府からの独立性が強化されています。

さて、その中央銀行の機能について説明しましょう。中央銀行の機能は以下の3つです。

(1)発券銀行  現金である紙幣を発行する。
中央銀行は、現金である紙幣の発行量を調整することにより、貨幣(=現金+預金)の量(供給量)を調整します。金利は貨幣の需要と供給により決まりますから、貨幣供給量を増やせば、金利が下落します。金利が下落すれば、お金が借りやすくなり、住宅投資
や企業の設備投資が増加し、需要(注文)が増えるので、景気はよくなっていきます。このように、中央銀行は発券銀行であるがゆえに、その発券の量を調整することにより金融政策を行うという重要な役割を担います。このあたりのことは、第4回「金利と景気」
第5回「金融政策の有効性」で詳しくお話しします。

(2)銀行の銀行 中央銀行は、銀行と取引を行います。
中央銀行は、銀行から預金を受け入れ、銀行に貸し出しをします。銀行との日々の取引を通じて、資金不足の銀行に貨幣を供給したりして、銀行の一時的な資金不足による支払不能、すなわち倒産などによる金融システムの混乱を防ぎます。前回お話ししたように、貨幣は貨幣経済にとってはきわめて重要なものであり、この経済の血液ともいえる貨幣の循環を円滑に行うためには、健全な金融システムの維持がきわめて重要です。健全な金融システムの維持も中央銀行の重要な役割です。

(3)政府の銀行 中央銀行は政府の資金収支の事務を行います。
政府は日銀に口座を持っており、政府の資金の収支(収入と支出)は日銀の口座で行われます。

★ポイント★
1.日銀の機能は、(1)発券銀行、(2)銀行の銀行、(3)政府の銀行。
2.それらの機能から、日銀は、金融政策、健全な金融システムの維持という役割を担う。

★キーワード★
市中銀行
中央銀行以外の銀行。日常、私達が利用している銀行(たとえば、東京三菱銀行とか三井住友銀行など)で、現金である紙幣の発行ができません。

中央銀行
1. 発券銀行、2.銀行の銀行、3.政府の銀行の3機能を持つ銀行。

米国連邦準備銀行(FRB:Federal Reserved Bank)
米国の中央銀行、つまり、ドル紙幣を発行する銀行。Federalの一部をとってFed(フェッド)とか、FRBとも呼ばれます。現議長のグリーンスパン氏は各方面からの信頼が厚い人物として有名です。

欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)
ユーロを発行する欧州共同体(EU)の中央銀行。

日本銀行
日本円の紙幣を発行する日本の中央銀行。日銀は公的機関なのですが、政府(行政府)ではなく、日本銀行法に基づいて設立された特殊法人。1998年4月より、日銀法が改正
され、日銀の政府からの独立性が強化されています。

発券銀行  現金である紙幣を発行する。

銀行の銀行 
中央銀行は、銀行と取引を行います。中央銀行は、銀行から預金を受け入れ、銀行に貸し出しをします。銀行との日々の取引を通じて、資金不足の銀行に貨幣を供給したりして、銀行の一時的な資金不足による支払不能、すなわち倒産などによる金融システムの混乱を防ぎます。ですから、中央銀行を銀行の銀行と呼ぶのです。

政府の銀行 
中央銀行は政府の資金収支の事務を行います。政府は日銀に口座を持っており、政府の資金の収支(収入と支出)は日銀の口座で行われます。ですから、中央銀行は政府の銀行といわれます。


■■ 5 金融政策の有効性 ■■

金融政策とは中央銀行(日本では日銀)が、世の中への貨幣供給量を調整することによって経済に影響を与えることをいいます。ここでは、不況期の金融政策のお話しをしましょう。

すでにお話ししたように、金利は貨幣のレンタル価格で、貨幣の需要と供給により決まります。貨幣の供給量が増えれば、貨幣のレンタル価格である金利は下落します。

では、日銀がどのように貨幣供給量を調整しているかを説明しましょう。たとえば、日銀が貨幣供給量を増加させたいとき、通常の公開された市場で国債などを買えば、その代金として現金を日銀の金庫から売り手に払うので、世の中への貨幣の供給量が増えます。このように、日銀が国債などを売ることにより貨幣供給量をふやすことを「買いオペレーション(略して「買いオペ」)」といいます。

逆に、日銀が貨幣供給量を減少させたいとき、通常の公開された市場で国債などを売れば、その代金として現金を売り手からもらい日銀の金庫に入れるので,世の中からの現金の回収となり、貨幣の供給量は減ります。このように、日銀が国債などを買うことにより貨幣供給量を減らすことを「売りオペレーション(略して「売りオペ」)」といいます。

以上の「売りオペ」「買いオペ」をまとめて、公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)といいます。現在、日銀が貨幣供給量を調整する手段として中心にしている方法です。

では、日銀が景気対策として「買いオペ」を行い、貨幣供給量を増加させたとしましょう。すると、前回お話ししたように、供給が増えれば、価格である金利は下落します。金利が下がると,資金が借りやすくなるので、住宅投資や設備投資が増加し、経済全体の投資は増加します。その結果、注文が増えるので,それに合わせて生産も増えます。経済全体では、国民総生産とか国内総生産と呼ばれる
ものが増加します。生産量が増加すれば、企業は労働者をたくさん雇うようになり失業は減少し、企業収益も改善して、社員の給料も上昇していくことでしょう。

以上は、前回の復習ですが、このようには金融政策がうまくいかないこともあります。それが、これから述べる「流動性の罠」と「投資が利子非弾力的」なケースです。

「流動性の罠」とは、すでに最低限の金利になっている状態です。金利が最低なのですから、これ以上金利を下げることは出来ませんので、金融政策で景気を回復させることは出来ません。この流動性の罠は不況時に起こりがちです。なぜならば、不況時には取引が少ないので、取引のための貨幣需要が減少し、価格である金利は低下していくからです。現在の日本がまさにこの状況といえるでしょう。

また、「投資が利子非弾力的」とは、金利(=利子率)が下落しても投資が増えないケースです。これは、深刻な不況期には、企業は自信をなくしていますから、金利(=利子率)にかかわらず、修理などの必要最低限の投資しか行わないことがあります。このときに、金融政策で、たとえ流動性の罠ではなく、金利を下げることが出来ても、企業は必要最低限の投資しかしませんから、投資は増えません。1998年の日本がこのような状況であったと思われます。

以上より、深刻な不況期には「流動性の罠」と「投資が利子非弾力的」なケースに陥りやすく、そのときには金融政策は効果がない(=無効である)ことになります。ですから、金融政策は深刻な不況対策としては頼りにならないことが多いといわれています。

★ポイント★
1. 日銀は、主に公開市場操作(「売りオペ」「買いオペ」)によって、貨幣供給量の調整を行っている。

2. 景気回復のための金融政策は「流動性の罠」と「投資が利子非弾力的」なケースでは、無効となる。

3. 金融政策が無効になる「流動性の罠」と「投資が利子非弾力的」は深刻な不況時に陥りやすい。

★ キーワード★
金融政策
中央銀行(日本では日銀)が、世の中への貨幣供給量を調整することによって経済に影響を与えること。

買いオペレーション(買いオペ)
日銀が国債などを売ることにより貨幣供給量をふやすこと。日銀が市場で国債などを買えば、その代金として現金を日銀の金庫から売り手に払うので、世の中への貨幣の供給量が増えることになります。

売りオペレーション(売りオペ)
日銀が国債などを買うことにより貨幣供給量を減らすこと。日銀が市場で国債などを売れば、その代金として現金を売り手からもらい日銀の金庫に入れるので,世の中からの現金の回収となり、貨幣の供給量は減ることになります。

公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)
日銀が市場において国債などを売買することにより貨幣供給量を調整する方法。「売りオペ」と「買いオペ」があり、現在、日銀が貨幣供給量を調整する手段として中心にしている方法です。

流動性の罠
すでに最低限の金利になっている状態です。金利が最低なのですから、これ以上金利を下げることは出来ませんので、金融政策で景気を回復させることは出来ません。この流動性の罠は不況時に起こりがちです。なぜならば、不況時には取引が少ないので、取引のための貨幣需要が減少し、貨幣のレンタル価格である金利は低下していくからです。

投資が利子非弾力的
金利(=利子率)が下落しても投資が増えないケースです。これは、深刻な不況期には、企業は自信をなくしていますから、金利(=利子率)にかかわらず、修理などの必要最低限の投資しか行わないことがあります。このときに、金融政策で、たとえ流動性の罠ではなく、金利を下げることが出来ても、企業は必要最低限の投資しかしませんから、投資は増えません。



■■ 6 ゼロ金利政策とは? ■■

ゼロ金利政策とは、超短期の銀行間の資金の貸借りの金利を実質ゼロに近づける政策です。銀行間の貸借りの市場はコール市場と呼ばれ、超短期とは、期間が翌日までの期間の短いものでオーバーナイト物と呼ばれます。

第1回でお話ししたように、金利は貨幣のレンタル価格であり、貨幣の需要と供給により決まります。ですから、日銀は超短期の資金を十分に供給することによって、金利を低下させ、超短期金利を実質ほぼゼロに近くなるようにしているのです。

したがって、超短期の銀行間の貸借りの市場で、ある銀行が資金が借りられなくて倒産するというようなリスクはなくなります。これが、ゼロ金利政策の目的です。

ゼロ金利政策は、それ以外にも経済に影響を与えています。たとえば、超短期金利を実質ゼロにすることにより、あまりにも短期金利は低くなるので、短期で資金を貸すより、株式投資や長期の貸出しを行うほうが有利となります。その結果、不況で、なかなかリスクをとって株式や長期貸出しを行わなかった金融機関に、それらを促す効果があります。その結果、株価は上昇しやすくなります。

このゼロ金利政策は、平成11年4月以降継続していますが、金利を実質ゼロまで下げるというゼロ金利政策については、日銀は「異常事態」と捉えています。つまり、金融市場の一時的混乱で、優良な銀行や企業までもが資金が借りられないことによって倒産してしまう事態も予想されたので、そのような事態を避けるため行った非常手段なのです。

現在では景気は回復傾向にあり、日銀は「異常事態」であるゼロ金利政策を解除するタイミングをうかがっています。ところが、そごう問題が出てきて、ゼロ金利政策の解除をためらっているようです。この話しは、次回にお話しします。

ところで、今までの連載では、あたかも金利(利子率)は一つしかないように説明してきましたが、金利は期間によって異なります。ですから、金利には、短期金利(貸付期間が1年未満、先に述べた超短期金利も短期金利の一つ)や長期金利(貸付期間が1年以上)など期間に応じた金利があります。また、新聞などに時々でてくる短期プライムレートとは、1年未満の貸付の際の最優遇金利です。長期プライムレートとは、1年以上の貸付の際の最優遇金利です。

なお、長期金利は、その長期間における短期金利の平均値で決まります。たとえば、期間1年の金利が、今年は金利が1%、来年の予想金利が2%、再来年の予想金利が3%としましょう。すると、一年ごとに資金を借り換えると、3年間の平均の金利は2%になります。ですから、期間3年間の長期金利も2%と決まります。

現在のゼロ金利政策の場合、現在の短期金利が異常に低いので、誰もが将来の短期金利は上昇すると予想しています。したがって、長期金利は、現在のきわめて低い短期金利と将来の上昇すると予想される短期金利の平均値ですので、現在のきわめて低い短期金利よりはやや高くなっています。

そして、ゼロ金利政策は現在の短期金利を極めて低くするので、現在の短期金利と将来の予想される短期金利の平均である長期金利も低めに抑える効果があるのです。


★ポイント★
1. ゼロ金利政策とは、超短期の銀行間の資金の貸借りの金利を実質ゼロに近づける政策。

2. ゼロ金利政策は、金融市場の一時的混乱により、優良な銀行や企業までもが資金が借りられないことによって倒産してしまう事態を避けるため行った非常手段。

3. 現在では景気は回復傾向にあり、日銀は「異常事態」であるゼロ金利政策を解除するタイミングをうかがってる。

4. ゼロ金利政策により、短期金利のみならず長期金利も低く抑えられ、また、株価上昇の力が働く。

★キーワード★
ゼロ金利政策
超短期の銀行間の資金の貸借りの金利を実質ゼロに近づける政策です。銀行間の貸借りの市場はコール市場と呼ばれ、超短期とは、期間が翌日までの期間の短いものでオーバーナイト物と呼ばれます。

短期金利
貸付期間が1年未満の際の金利。短期プライムレートが代表的。

短期プライムレート
1年未満の貸付の際の最優遇金利。

長期金利
貸付期間が1年以上。長期プライムレートが代表的。

長期プライムレート
1年以上の貸付の際の最優遇金利。

長期金利の決定(金利平価説)
長期金利は、その長期間における短期金利の平均値で決まるという理論。たとえば、期間1年の金利が、今年は金利が1%、来年の予想金利が2%、再来年の予想金利が3%としましょう。すると、一年ごとに資金を借り換えると、3年間の平均の金利は2%になります。ですから、期間3年間の長期金利も2%と決まります。



■ ■ 7 政策のタイムラグ−フリードマンの主張 ■■

経済学の世界では、マネタリストという貨幣の役割を重要視する学派があります。マネタリストの中心人物はミルトン・フリードマンです。今回は、フリードマンの主張を取り上げ、金融の解説の締めくくりとしたいと思います。

まず、フリードマンは、金融政策は効果が出るのに時間が半年から2年かかる(タイム・ラグがある)と主張します。

すでにお話ししたように、金融政策は金利を下げることより投資を増やし、景気を良くします。しかし、企業の投資には、投資計画の立案、関係部門の承認、業者選定などかなりの時間がかかります。ですから、金利が下落したからといってすぐには投資は増えず、タイム・ラグがあることになります。

つまり、不況期に金融緩和策を行っても、効果は半年から2年あとに出るので、その頃には好況になっているかもしれません。逆に、景気加熱期に金融引締めを行うと、その効果は半年から2年あとに出るので、その頃には不況になっているかもしれません。

そこで、フリードマンは、金融政策は余計なことであって、かえって経済を不安定化させるだけで、行うべきではない、と主張します。

実際には、各国の中央銀行は金融政策を行っていますので、フリードマンの意見は全面的には受け入れてはいません。しかし、タイム・ラグの指摘はきわめて重要です。つまり、金融政策は、常に、その効果は半年から2年先に効果が出るとい
うことを考えて行わなくてはならないということだからです。

ですから、どこの国でも中央銀行のコメントは慎重で歯切れの悪いものです。これは、現在の景気のみならず、半年から2年後の景気も考えながらコメントをしているからです。

ゼロ金利政策との関連で言えば、日銀は解除したいが、政府や産業界は解除反対と言う構図です。今の状況だけを考えれば、ゼロ金利を解除する必要はありません。しかし、現在のゼロ金利の効果は半年から2年後に効いてくる。その頃には景気は良くなっているだろうから、ゼロ金利は今のうちから解除しよう、というのが日銀の根底にある思考パターンではないでしょうか。


★ポイント★
1. フリードマンが指摘するように、金融政策は効果が出るのに時間がかかる。

2. したがって、中央銀行は、現在の景気のみならず、半年から2年先の経済を考えながら金融政策を行う必要がある。非常に難しい判断を行っている。

★キーワード★
マネタリスト
経済における貨幣の役割を重要視する学派。ミルトン・フリードマンが有名。

金融政策のタイム・ラグ
金融政策を行ってから効果が出るまでに時間がかかること。マネタリストのフリードマンは金融政策は効果が出るのに時間が半年から2年かかる(タイム・ラグがある)と主張します。