早わかり消費




(目次)
1.消費の重要性
2.ケインズの消費理論
3.ライフ・サイクル仮説
4.日本の貯蓄率はなぜ高いか?




■■ 1.消費の重要性 

日本の国内総生産(GDP)は約500兆円です。ということは、日本の生産したものへの需要も500兆円近くあったはずです。この日本国内で生産したものへの需要を統計上は国内総支出(GDE:Gross Domestic Product)といいます。この国民総支出(GDE)約500兆円のうち、約300兆円が消費です。つまり、日本国民が生産したものの6割は消費に回っていることになります。

ですから、この消費が増えれば需要が増えるので企業は生産を増やしGDPは増加し景気は良くなり、逆に、消費が減れば需要が減ってしまい企業は生産を減らすのでGDPは減少し、不況となります。

したがって、消費の大きさがどのように決まるのかということは一国経済においてきわめて重要なテーマとなります。


★ ポイント★
1. 日本国内で生産したものへの需要(国内総支出:GDE)の6割は消費が占める。

★ キーワード★
国内総支出(GDE:Gross Domestic Product)
日本国内で生産したものへの需要。国内総支出=消費+投資+政府支出+輸出−輸入。



■■ 2.ケインズの消費理論 ■■

ケインズは、一国の消費量はGDP(国内総生産)の大きさによって決まると考えました。GDPが大きくなれば、たくさん生産し、多くの所得を得ているので、当然消費も多くなるという考えです。この考えは、個人でいえば、給料が高くなるほどたくさん消費するという当たり前のことをいっているのです。

しかし、このケインズの消費理論にも以下のような問題があります。まず、人は消費をするときに、現在の所得に応じて機械的に消費するのではなく、一生涯のことを考えて、具体的には老後のための蓄えなども考えて消費をするのではないかという問題点があります。

次に、人は所得だけでなく、現在保有する資産によっても消費量は違うのではないかという問題点があります。これは、同じ給料の人であっても、資産をまったく持っていない人と、資産を100億円持っている人では消費量が違うはずだということです。

以上のような問題点を克服した理論として、次回は、「ライフサイクル仮説」を解説します。

★ポイント★
1.ケインズは、一国の消費量はGDP(国内総生産)の大きさによって決まると考えた。
2.しかし、ケインズの消費理論は、人の消費は、一生涯のことを考えて行うのではないか、所得だけでなく、現在保有する資産によっても消費量は違うのではないかという問題点があります。

★キーワード★
ケインズの消費理論
一国の消費量はGDP(国内総生産)の大きさによって決まるというケインズの理論。



■■ 3.ライフサイクル仮説 ■■

ライフサイクルとは、「誕生、就学、就職、退職、死亡」など人生の一連の局面をいいます。ライフサイクル仮説とは、「人々は一生涯での消費額を一生涯で使えるお金と等しくなるように毎年の消費量を決める」というものです。

この考えは、私達が退職後には所得がなくなるので、それに備えて若いうちから消費を抑えて貯蓄をするという行動を説明できます。

ところで、「一生涯で使えるお金」とは、現在持っている資産と今後退職まで得られる所得です。したがって、「現在保有する資産+将来得られる所得=一生涯での消費量」ということになります。

ですから、バブル期のように資産価格が上昇すれば、現在保有する資産+将来得られる所得である一生涯で「使える」お金が増える結果、一生涯での「消費」が増加し、1年間での「消費」も増加することになります。

また、逆に、バブルが崩壊し資産価格が下落すれば、現在保有する資産+将来得られる所得である一生涯で「使える」お金が減る結果、一生涯での「消費」が減少し、1年間での「消費」も減少することになります。

このようにライフサイクル仮説は資産を考えていますので、バブル期の消費拡大と、バブル崩壊後の消費落ち込みをうまく説明できます。

★ ポイント★
1.ライフサイクル仮説は、「現在保有する資産+将来得られる所得=一生涯での消費量」となるように毎年の消費量が決まると考える。
2. この理論であれば,老後のために現在の消費を減らし貯蓄する行動を説明できる。
3. この理論であれば,バブル崩壊で資産価格が下落すれば消費が落ち込むことも説明で
きる。

★キーワード★
ライフサイクル仮説
「人々は一生涯での消費額を一生涯で使えるお金と等しくなるように毎年の消費量を決める」という消費理論。具体的には,「現在保有する資産+将来得られる所得=一生涯での消費量」となるように毎年の消費量が決まると考える。この理論であれば,老後のために現在の消費を減らし貯蓄する行動やバブル崩壊で資産価格が下落すれば消費が落ち込むことも説明できる。



■■ 4.日本の貯蓄率はなぜ高いか? ■■

貯蓄とは、所得から消費を引いた残りです。ですから、「日本の貯蓄率はなぜ高いか?」というテーマは、「日本の消費率はなぜ低いか?」と同じことになります。したがって、経済学では、貯蓄の議論は消費理論を用いて分析することになります。

さて、消費の理論で、ライフサイクル仮説とは、「人々は一生涯での消費額を一生涯で使えるお金と等しくなるように毎年の消費量を決める」というものでした。この考えは、私達が退職後には所得がなくなるので、それに備えて若いうちから消費を抑えて貯蓄をするという行動を説明できます。

ですから、日本の高貯蓄については、ライフサイクル仮説を用いて、「今までの日本は、若年層が多かったので老後に備えて貯蓄をする人が多く、国全体での貯蓄率は高かった」と説明することができます。

この理論を用いると、以下のように、高齢化の進行に伴い日本の貯蓄率は低下することもわかります。

高齢化に伴い高齢者が増えます。高齢者は退職者が多く、所得は少ないですから、「貯蓄=所得―消費」はマイナスとなります。ですから、国民の中で貯蓄がマイナスの人が増えれば、国全体での貯蓄率は急速に低下していきます。

この貯蓄率の低下は日本経済を以下のように大きく変えます。

貯蓄率の高い現在の日本では、その多くの貯蓄は金融機関に預けられ、金融機関から国内の設備投資や海外への投資や貸付けへと回っています。しかし、高齢化社会になると、貯蓄率が低下し貯蓄が少なくなる結果、国内の設備投資や海外への投資や貸付けにまわす資金がなくなり、資金不足に陥るおそれが出てきます。
そうすると、現在とは逆に、外国から資金を借り入れることになるかもしれません。


★ポイント★
1.ライフサイクル仮説に基づくと、若いうちは老後に備えて貯蓄をし、老後は、蓄えた資産を取り崩すので、マイナスの貯蓄になる。
2.日本は今まで若年層が多かったので貯蓄率が高かったが、今後、高齢化社会が進めば貯蓄率は低下すると予想される。